第5回XR・メタバース総合展【秋】で注目された最新技術の中から、「Robloxプラットフォームを活用したグローバル世代への次世代マーケティング体験デザイン」をテーマに詳細に解説する。
2025年10月8日から10日まで幕張メッセで開催された「第5回XR・メタバース総合展【秋】」は、XR(拡張現実、仮想現実、複合現実)とメタバースの最新サービス・技術が一堂に会し、企業のDX推進からエンターテイメント、教育、マーケティングに至る幅広い分野での最先端取り組みが紹介された国内最大規模の専門展示会である。その最終日、Robloxマーケティング本部長の梅林桜子氏、Metaverse Japan代表理事の長田新子氏、そしてトランスコスモスメタバースストラテジスト光田刃氏が登壇した特別講演「世界をつなぐ体験デザイン―グローバル世代に響く学びとブランド体験」は、多くの来場者の関心を集めた。
Robloxの躍進とグローバルなユーザー基盤
Robloxはデイリーアクティブユーザー数が1.1億人を超え、Z世代やα世代を中心に急成長を続ける世界最大級のメタバースプラットフォームである。ユーザー参加型のゲーム開発環境と豊富なインタラクティブ体験を武器に、世界中に広がる若い世代を中心に多様なコミュニティを形成している。こうした大規模で多様なユーザーベースは、単なるエンターテイメントを超え、マーケティングや教育の新しいチャネルとして極めて重要な存在となっている。
世界をつなぐ体験デザインとは
従来の一方向的な広告宣伝手法とは異なり、Robloxをはじめとするメタバース空間では、ユーザーが能動的に参加・交流しながらブランド体験を深める「体験デザイン」が鍵となる。講演では、特に「グローバル世代に響く学びとブランド体験」の創出に焦点が当てられた。具体的には、次のような特徴が強調された。
– 没入型インタラクション:XR技術を活用し、ユーザーが仮想空間内で主体的に動き、触れ、試しながらブランドストーリーを体感する。
– コミュニティ形成と共創:ユーザー間の交流から生まれるリアルタイムフィードバックや共創活動が、ブランド認知とロイヤリティを高める。
– 教育的要素の統合:ゲームや体験に教育的なコンテンツを織り交ぜることで、楽しく自然な形で知識習得やスキルアップを実現する。
これらの要素は、グローバルな若年層の多様な価値観や文化的背景に対応しながら、ブランドが単なる商品提示から脱却し、生活の一部として体験価値を提供する戦略を示している。
未来のマーケティングにおける示唆
Robloxのようなプラットフォームを活用したメタバースマーケティングは、次のような未来像を描く。
– ユーザー中心型のマーケティング:消費者はただの受け手ではなく、プロモーション活動の共同創造者となる。これによりブランドの忠誠心が格段に強化される。
– リアルとバーチャルの融合(O2O戦略):リアル店舗やイベントと連動するバーチャル体験を設計し、顧客接点の拡大と深耕を図る。
– データドリブンなインサイト活用:ユーザーの行動ログや交流データを分析して、よりパーソナライズされた体験設計と効果検証をリアルタイムで可能にする。
また、教育分野への応用として、メタバース空間内でのコーディング学習や語学教育、異文化交流といった取り組みが未来の学びの中心となっていくことも示唆された。
技術と社会実装の課題と展望
一方で、こうした体験デザインの普及には技術的なハードルや社会的な課題もある。例えば、XRデバイスのコスト、通信インフラの整備、プライバシーと安全性の確保、多様な文化・言語への対応などだ。講演では、これらの課題解決に向けた業界の連携強化や標準化推進の必要性も訴えられた。
今回の展示会に併せて開催された「JAPAN Metaverse Awards 2025」では、こうした革新的な取り組みやプロトタイプが評価され、メタバースの社会実装を後押しする重要な位置付けとなっている。
まとめ
第5回XR・メタバース総合展秋での展示・講演は、Robloxを中心としたユーザー参加型のメタバースプラットフォームが、未来のマーケティングや教育のあり方を大きく変革しつつあることを示した。没入型で双方向性の高い体験デザインこそが、若い世代をはじめとしたグローバルユーザーにブランドの価値を深く伝え、次世代の顧客基盤形成に不可欠な要素である。今後の技術進歩と社会実装の推進が期待され、より多様で豊かな体験がメタバース空間で展開されていくことが予測される。