札幌駅は2025年2月に、JRタワーを中心としたリアルの駅ビル空間と並行して「メタバース空間上に札幌駅周辺を再現する」という画期的な試み『雪ミク in JRタワー 2025』を実施しました。このプロジェクトは、物理空間としての駅が持つ「通過する場所」という役割を超え、「とどまる場所」かつ「つながる場所」へと進化させることを目的としています。リアルとバーチャルの両方で北海道を代表する観光名所や文化、雪ミクをはじめとした地域キャラクターの魅力を発信し、新たな交流と体験を創出しようというのが狙いです。
メタバース空間としての「さつえき.world」は、JRタワーなど札幌駅エリアのランドマークや周辺環境を精緻にデジタル再現し、来訪者は自身のアバターを使いながらバーチャル展示やイベントブースを訪れ、北海道各地の文化や特産、観光資源に触れることができます。この空間は常設展示も整備されており、物理的な距離や時間の制約を超えて北海道の魅力を体感できる新感覚のプラットフォームとして活用されています。
こうしたメタバース化の試みは、従来の駅が単なる交通の交差点であった役割から脱し、地域の情報発信拠点および交流拠点へと変貌を遂げることを示しています。リアルの駅ビルに訪れた人々が、その体験の延長線上で世界中どこにいても同じ駅のメタバース空間にアクセスし、イベントに参加し、地域の魅力を再発見できるという点は大きな特徴です。
「駅ビルがメタバースをつくる理由」としては、新時代の空間価値の創出が挙げられます。物理的な施設には限界がある中、デジタル空間が「もう一つの駅」として機能し、訪問者同士のコミュニケーションや地域の内外からの新たな交流、さらには観光振興や地方創生への貢献も期待されています。特に雪ミクという北海道の冬の象徴的キャラクターを中心に据えることで、ファン層の拡大とともに地域文化のグローバルな発信に成功しています。
また、このプロジェクトには運営スタッフの日常的な工夫や進化も反映されています。メタバース空間の魅力を高めるため、ユーザーインターフェースの改善やイベント企画、地域情報の発信強化など多面的な取り組みが重ねられ、単なる仮想展示にとどまらない「参加体験」へと深化しています。
2025年の『雪ミク in JRタワー』の事例は、全国の駅や都市拠点が新たな地域活性化の方法として仮想空間と連携していく道を示しています。リアルとデジタル双方の空間を行き来しながら、ユーザーは自分の都合や興味に応じた多様な接点を持つことができ、駅という場所の価値を根本から刷新する実験的なモデルケースといえるでしょう。今後も札幌駅は「さつえき.world」を通じてメタバース化に積極的に取り組み、北海道の魅力を広く世界に届けていくことが期待されています。