大阪・関西万博の現場で展開されたNTTドコモの先進的なMR（複合現実）技術による「新たな扉体験」は、実際の物理的な扉を開けると、まるでバーチャル空間に直接繋がっているかのような感覚を創出し、来場者に今までにない没入型体験を提供した。この技術は2025年4月23日と9月19日の2日間、「けいはんな万博 in 夢洲」で展示され、延べ約5,000人もの来場者を惹きつけた。特に9月19日の回では、ドコモブースで約100名が体験し、「これを体験するために来た」「万博で一番面白かった」といった高い評価が多く寄せられている。
このMR体験は、物理空間と仮想空間の境界を自然に溶け込ませることを目指して開発されたもので、参加者は実際に存在する扉を操作することで、物理的なリアリティとバーチャルの視覚的・聴覚的要素が連動した世界へと誘われる。扉の先に待つのは、宇宙空間のような非日常的なバーチャル環境であり、利用者はその空間に直接入り込む感覚を得られる。これは従来のVRやAR体験に対し、よりリアルな「接続感」を伴う次世代のMR表現技術の一例と言える。
NTTドコモの研究開発部門が手掛けるこのMR技術は、多方面への応用可能性も視野に入れている。例えば、観光業界においては歴史的建造物の内部に実際に入ることなく訪れる体験、あるいは不動産業界では物件の仮想内覧、さらにはエンターテインメント分野でも新たな没入型ゲームや演劇、ライブイベントへの応用が期待されている。体験者からの生のフィードバックを受けて、ユーザー体験の向上に向けた研究も継続して行われており、学術的にもその有用性が評価されている。
技術的には、扉に対するハプティック（触覚）フィードバックや、実空間の動作をバーチャル側にリアルタイム反映するセンシング技術、ドコモが誇る高速低遅延の5Gネットワークと連携したデータ処理基盤が基礎となっている。これにより、途切れや遅延のないスムーズな体験が実現されている。この展示体験の成功は、大阪・関西万博が掲げる「未来への扉を開く」というテーマにも呼応しており、最新技術の社会実装可能性を示す重要な一歩となった。
今後は、さらにこの技術を進化させ、街中の実在する扉や駅、公園の出入り口など多様な場所での展開を検討している。これにより、日常空間と仮想空間の連結が日常化し、人々の生活様式に革新的な変化をもたらすことが期待されている。ドコモはこのMR技術を基に、新たなアプリケーションの開発やパートナーシップも模索している。
この先駆的な扉体験は、単なる技術デモを超えて、社会・文化における「リアルとバーチャルの共生」の未来像の提示であり、参加者一人ひとりに「未来の扉を開ける体験」をリアルに感じさせることで、デジタル技術の魅力と可能性を強く訴求した。
以上のように、NTTドコモが大阪・関西万博で披露したMR技術による新たな扉体験は、物理的な扉を媒体としてバーチャル世界への没入を実現、来場者の高評価を獲得し、観光・不動産・エンタメといった多分野への応用を視野に入れた革新的な未来技術を示すものだった。今後、さらに実用化に向けた展開が期待される取り組みである。
