2025年夏、学術VTuber界隈で注目を集めた「学術VTuberの本気の自由研究2025」企画が、従来のオンライン発表にとどまらず、リアルイベントとしても大きな盛り上がりを見せた。この企画は、VTuberとして活動しながら学術的専門知識を持つクリエイターたちが、自身の得意分野で「自由研究」に挑戦し、成果を発表するというものである。主催者の骨格標本師VTuber・詩花羽(しかばね)なぬの氏が中心となり、個人勢が主体の学術VTuber界隈の交流と連帯感を強める試みとして実施された。
企画の応募締切は2025年8月31日、発表配信は9月6日にYouTubeで行われた。参加者たちは物理、生物、歴史、工学、文学など多様な領域の研究成果を発表し、単なるエンターテインメントの枠を超えた知的な挑戦が話題となった。発表の形式はオンライン配信が中心だったが、配信後にさらなる発展があり、研究発表ポスターが千葉県四街道市のVTuber特化イベントスペース「Startrail」にて約1ヶ月間展示されることが決定。このリアル展示は、VTuberが仮想空間を越え、リアルなコミュニティとの接点を持つ重要な試みとして評価されている。
この展示会場では、各参加VTuberがそれぞれの研究テーマを視覚的に表現したポスターが来場者の目を引き、来場者は直接ポスターに触れたり解説を受けたりできる形式が採られた。展示によりオンラインでは伝わりにくい細かな説明や交流が可能となり、ファンと研究者、そして教育に興味を持つ一般層が交流する新しい文化的空間が創出された。VTuberの濃密な交流コミュニティならではの「ゆるやかな箱的つながり」を活かしつつ、学術分野とエンタメが融合した斬新なイベントであった。
また、発表内容も単なる趣味的なものではなく、例えば科研費申請の模擬体験を行ったり、日常の科学現象への新たな解釈を提示したり、身近な歴史事件を多角的に分析した研究など、多岐にわたる。これにより学術VTuberたちが専門知識のアピールのみならず、その知識の「活用力」を示す場にもなった。参加者の多くがリアル研究者や専門職に近いバックグラウンドを持っており、自由研究という形を借りた本格的な学術交流としても注目を浴びた。
この「学術VTuberの本気の自由研究2025」イベントは、VTuberによる学術・教育コンテンツの可能性を拡張するものとして、今後も毎年の恒例企画として期待されている。オンライン配信による広範な観客動員と、リアル展示による密なコミュニケーションの両立が、新たなVTuberコミュニティの潮流を象徴するとともに、学習・研究の新たな形態の提示にもつながっている。
今回の企画を通じて学術VTuberたちは、エンタメとしての魅力だけでなく、それぞれの専門性を活かし教育的価値や学術的意義を持つコンテンツ創出の道筋を示した。これによりファン層の拡大のみならず、教育関係者や研究者の注目も集め、学術VTuberの社会的評価向上へも寄与する結果となった。夏休みの宿題という身近なテーマを核にしながら、知識共有のプラットフォームとしてのVTuber界隈の可能性を広げた「学術VTuberの本気の自由研究2025」は、未来の科学コミュニケーションモデルを体現する画期的イベントとして2025年の夏の話題となった。