米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まる中、暗号通貨市場は大きな影響を受けている。とりわけ2025年下半期に入り、米国の物価上昇(インフレ)がなお高水準で推移しながらも、景気減速や市場の緊張感から「年内0.75ポイント、その後1.5ポイントの利下げ」が織り込まれるようになったことで、市場のセンチメントは急速に「リスク資産選好」方向に傾きはじめた。暗号資産(仮想通貨)は、こうしたマクロ経済ニュースにきわめて敏感であり、実際、ビットコインや主要アルトコインの価格が急騰する局面も見られている。
最新の市場動向を見ると、FRBの利下げ観測→リスク選好姿勢の強まり→暗号通貨市場の資金流入、という流れがはっきりと出ている。たとえば9月発表の米非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を下回ったことで、短期的に追加引き締めの懸念が後退し、ビットコイン価格は2週間ぶりの高値を付けた。続く米生産者物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)も、それぞれ市場が懸念するほどインフレ加速を示さなかったことから、「FRBは積極的には利上げせずいずれ利下げに転じる」との思惑が広まった。
このFRB利下げ観測が暗号通貨に追い風となる主な理由は、「金利低下=流動性増加=リスク資産への資金移動」である。金融政策が緩和されると、銀行等から市場へ資金供給が増え、投資家は伝統的な安全資産(国債など)以外の高リスク・高リターン商品へ資金を振り向けやすい。特に2010年代以降、株式や不動産、コモディティと同様に、「利下げ局面で資金が流れ込みやすい先端リスク資産」として暗号通貨が台頭してきた。
こうした背景のもと、2025年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)会合でも世界中の投資家がFRB議長パウエル氏の発言や声明に注目している。もしパウエル氏が明確に「今後も利下げ方針を継続」と示唆すれば、さらに新規資金流入や価格上昇の余地が増す。一方、記者会見などで慎重・タカ派的な姿勢(=過度な利下げ期待を牽制するトーン)が出れば、一時的な調整や売りが出る可能性も高い。
短期的には、今週の米FOMC後の記者会見とともに、米小売売上高や企業決算などの経済指標にも市場の目は向いている。小売売上高が予想を下回れば米経済の減速感が強まり、再び「一段と早い利下げ」が意識されやすい。そうなればビットコインや主要アルトコイン価格はさらに上昇するシナリオも考えられる。
一方、中長期では以下の点に留意したい。まず、インフレ率が高止まりし続けるようなら、FRBも利下げを急ぐことはできず、金利リスクは依然残る。また、FRBの金融政策だけでなく、米国経済の実体悪化や地政学リスク(規制強化・紛争など)も暗号資産市場を大きく揺るがす要因となる。そのため、極端な一方向への賭けや、過度な値上がり期待には警戒が必要である。
今後の市場展開として有力視されるのは、「利下げ期待—>噴き上がり—>FOMC事後の調整—>新たな材料出現で再び上昇」といった波状的な展開だ。BTC・ETHといった主力コインだけでなく、技術革新や実用性が評価されるアルトコイン(SUI・ADAなど)への資金流入も注目される。
まとめると、2025年後半のFRB利下げ観測は暗号通貨市場を刺激し、短期的には強気相場を形成しやすい地合いとなっているが、その根底にはインフレやリアル経済の不透明要因も潜むため、マーケット全体はきわめて敏感に政策・経済データへ反応しやすい状態が続く。今後もFRB動向と主要経済指標、そして規制や技術革新ニュースを的確にウォッチすることが、市場を見極める上で不可欠となる。