2025年10月、米国金融政策の大転換がビットコイン価格の上昇を大きく後押しする出来事があった。それは、ドナルド・トランプ大統領が401(k)確定拠出年金プランでビットコインなど仮想通貨への投資を正式に認める大統領令に署名したことである。これにより8.7兆ドル(約1,279兆円)規模の巨大な米年金資産市場が、仮想通貨市場の新たな流入先として開放されることとなった。
従来、米国の401(k)などの主要な退職年金プランでは、株式・債券・不動産など従来型金融資産に限定され、暗号資産へのアクセスは極めて限定的だった。しかし、今回の大統領令によって個人や機関の運用担当者は、ポートフォリオ多様化の一環として、ビットコインを含む仮想通貨への投資を合法的かつ制度的に行えるようになる。これは資産形成の選択肢が大幅に拡大することを意味し、インフレ懸念やドル安、さらには地政学リスクが高まるなかで、伝統的資産への信認が揺らぐ今日、資産の避難先・ヘッジ先としてのビットコイン需要が急増する背景となっている。
アナリストや金融業界の専門家の多くは、この政策転換がビットコインをはじめとした仮想通貨に対する持続的で構造的な資金需要を生み出す転機になると強調する。特に、8.7兆ドル市場からの一部資金シフトだけでも、時価総額に対して薄い仮想通貨市場には大きな価格インパクトをもたらす可能性がある。さらに、401(k)参加者の長期積立による定額買い(ドルコスト平均法)は、市場のボラティリティを低減し、安定的な上昇圧力を与える要因となる。
実際、この発表を受けてビットコインは即座に反応し、11万4259ドルの安値から11万6400ドルへと短時間で2,000ドル近い上昇を記録した。同時にイーサリアムなど他の主要仮想通貨も大幅な上昇を見せた。市場関係者は、「米金融政策史上最大級の仮想通貨フレンドリー政策」と位置づけ、この流れが今後数年にわたり継続するとの見方を示している。
トランプ政権はこの措置を、「イノベーションと金融の自由拡大」を重視する姿勢の象徴と位置付ける。規制緩和を推進し、仮想通貨・プライベートエクイティ・不動産などの代替資産を資産形成に取り入れることで、インフレや景気低迷に対する個人の自己防衛力を高める狙いがある。
もっとも、一部の専門家からは「仮想通貨の価格変動リスクを退職資産まで拡大するのは、安定性の観点で慎重な設計が必要」との慎重論も出ている。しかし世界の機関投資家は、長期分散投資戦略という観点で仮想通貨を資産ポートフォリオに組み入れる動きを強めており、「今やビットコインは投資の“メインストリーム”に加わった」とする声が支配的になりつつある。
インフレ率の高止まりや米ドル不安、株式市場の先行き不透明感など、従来資産への逆風が強まる中、構造的資金流入という米国金融政策の歴史的転換が、2025年以降もビットコインをはじめ仮想通貨市場の上昇を後押しし続けるだろう。制度と投資家心理の両面からも、今後の展開に世界の注目が集まっている。