日本においてNFTと法制度の進化に関して最も注目すべき最新動向の一つは、2025年に入り「ETH Treasury」を掲げる上場企業が初めて誕生したことです。これはNFT・暗号資産業界全体に波及する大きな法的・制度的ブレークスルーであり、Web3の新たな展開を象徴しています。
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ETH Treasury誕生とその意味
2025年9月、日本の東京証券取引所に上場するQuantum Solutions株式会社が、自社財務の一部としてイーサリアム(ETH)を戦略的に長期保有(Treasury化)すると発表しました。これにより、Quantum Solutionsは日本で初めて「企業がETHを公的財務として会計処理する」事例となり注目を集めています。従来、日本企業の財務で暗号資産を直接保有し、そのリスク・価値変動を組織として受け入れる例は極めて限定的でした。しかし今回、同社は約1.8億ドル(260億円)規模の資金調達を実施し、そのうち多くをETH Treasury化することで、国内ルールのもと新たな運用モデルを提示しています。
さらに今回の動きにはアメリカや中国などの大手投資機関が参画し、資本市場から国際的な信任を得た点も、業界発展の大きな布石となっています。
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日本におけるNFT・暗号資産を巡る法制度の進化
このような事例の背景には、日本政府・金融庁によるWeb3や暗号資産関連政策の加速と、法的環境の整備が大きく関与しています。2023年以降、以下のような変化が次々に進みました。
– 暗号資産の会計基準や税制上の扱いに関して明確化・改正を進め、企業の暗号資産保有・運用の実務的障壁を緩和
– NFTの流通、プラットフォーム運営に関する法的ガイダンスを金融庁と経済産業省が連携して発出
– マネーロンダリング対策(AML/CFT)、FATF勧告への国内法順守強化
政府は特にWeb3推進を成長戦略の柱としています。NFTについては、既存の金融商品取引法や資金決済法だけでなく、電子記録移転権利法など関連法の解釈拡張や新規施策により、従来あいまいだった領域の明文化が進みつつあります。
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日本企業とNFT・暗号資産の新たな統合戦略
Quantum Solutionsの取り組みは、NFTや暗号資産を、企業活動に直接取り込む「オンチェーン財務」の時代の到来を意味します。同様のケースは米国やシンガポールでも見られますが、日本の上場企業が実現した意義は極めて大きいです。この動きによって、
– 上場企業によるNFT/暗号資産の本格的な会計処理
– Web3プロジェクトに対する資本市場からの真の評価・資金流入
– 規制当局と市場参加者がリアルタイムで対話しながら新たな法整備を推進する「サンドボックス」的な事例蓄積
が今後加速することが期待されています。
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今後の展望と課題
今後は、こうしたETH Treasury化やNFT会計、ステーキング収益の処理に関する明確なガイドラインの設定、マルチトークン・クロスチェーン運用の法的枠組みづくりが課題となります。また、NFTの著作権や二次流通時の配分(ロイヤルティ)の自動執行、DAOとの法的整合性なども、引き続き検討が求められます。
日本におけるWeb3法制度の進化は今まさに「動きながら形づくられる」過渡期にあり、現実の事例をもとにガイドラインと実務慣行が積み上げられています。Quantum SolutionsのETH Treasuryはその象徴的な第1歩と言えるでしょう。