トランプ前大統領の暗号資産政策が世界に波及、アジア各国で規制緩和の動き
ドナルド・トランプ前米大統領の暗号資産に対する積極的な姿勢が、アジア諸国の政策に大きな影響を与えている。トランプ氏が掲げる「米国を世界のAIと暗号資産の中心に」という方針を受け、日本をはじめとするアジアの主要国で、暗号資産市場に対する規制緩和の動きが加速している。
日本では、金融庁が暗号資産規制の見直しに着手した。金融庁が立ち上げた有識者による勉強会では、暗号資産が投資対象として社会に浸透しつつあるとの認識で一致。これを受け、利用者保護を強化しつつ、暗号資産を金融商品取引法の対象とすることが検討されている。この動きは、より厳格な規制の導入を意味する一方で、暗号資産ETF（上場投資信託）の承認など、新たな金融商品の導入にも道を開く可能性がある。
タイでは、ビットコインETFの国内取引所への上場承認が検討されている。タイ証券取引委員会（SEC）のポルナノン・ブドサラトラゴン事務局長は、「好むと好まざるとにかかわらず、世界中で仮想通貨の採用が広がるよう進めていく必要がある」と述べ、積極的な姿勢を示している。この動きは、2024年1月に米国でビットコインETFが承認されたことを受けたものであり、アジア地域での暗号資産の主流化を加速させる可能性がある。
マレーシアでも、アンワル首相がデジタルトランスフォーメーション（DX）の一環として、ブロックチェーンや暗号資産を優先すべきだとの考えを表明。「他国が先導するのを待つべきではない。ゼロから始める余裕はなく、他国の経験から学ぶ必要がある」と述べ、積極的な導入姿勢を示している。
これらの動きは、トランプ氏の政策方針が世界的な競争を引き起こしていることを示している。暗号資産専門家のノエル・アチェソン氏は、「これまでは時間をかけることができた。米国がデジタル資産に関し動いていなかったからだ。しかし、競争は今、現実のものになった」と分析している。
一方で、中国は2021年の仮想通貨禁止以降、活動が抑制されている「眠れる巨人」として注目されている。世界第2位の経済大国である中国の動向が、今後の暗号資産市場の行方を左右する可能性がある。
トランプ氏の政策は、単に暗号資産市場の活性化だけでなく、AIとの融合も視野に入れている。AIと暗号資産技術の統合は、金融取引の効率化や新たな経済モデルの創出につながる可能性がある。この動きは、国家の金融基盤そのものを再構築する可能性を秘めており、各国の経済政策に大きな影響を与えることが予想される。
しかし、暗号資産市場の急速な発展には課題も多い。投資家保護や市場の安定性確保、マネーロンダリング対策など、規制当局は様々な問題に直面している。各国がこれらの課題にどう対応し、イノベーションと規制のバランスをどう取るかが、今後の暗号資産市場の発展を左右するだろう。
トランプ氏の暗号資産政策は、世界経済の新たな局面を開く可能性を秘めている。アジア諸国の動向は、この政策が単に米国内にとどまらず、グローバルな影響力を持つことを示している。今後、各国の規制環境や市場動向、そして技術革新の進展を注視する必要がある。暗号資産を巡る国際競争は、まさに新たな段階に入ったと言えるだろう。
