トランプ政権、暗号資産振興へ大胆な規制緩和を推進
ドナルド・トランプ大統領が掲げた「米国を地球上の暗号資産の中心地にする」という公約が、具体的な政策として動き出している。トランプ大統領は就任直後、「暗号資産」振興のための大統領令に署名し、暗号資産業界に大きな転換をもたらす規制緩和の方針を打ち出した。
この大統領令は、ビットコインなどの暗号資産だけでなく、ブロックチェーン技術を用いたすべてのデジタル資産を対象としている。主な内容には、国家による暗号資産の戦略的備蓄、ブロックチェーン技術の促進支援、そして規制の枠組みの見直しが含まれる。
特筆すべきは、国家経済会議(NEC)の下にデジタル資産に関する作業部会が設置されたことだ。この作業部会は、半年以内にデジタル資産に関する新たな規制の枠組みを策定することを任務としている。作業部会の議長には、PayPalの元COOで暗号資産推進派として知られるデービッド・サックス氏が就任。司法長官、財務長官、SEC(証券取引委員会)などの主要機関の代表者も参加し、包括的な検討が行われる。
また、ドル裏付けのある合法的で正当性のあるステーブルコインの開発と成長を促進する方針も示された。これは、暗号資産市場の安定性と信頼性を高めるための重要な施策と位置付けられている。
一方で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行は禁止された。これは、民間発行の暗号資産を中心とした市場の発展を目指す姿勢の表れと言える。新たに就任したスコット・ベッセント財務長官も、「米国はCBDCを持つ理由がない」と明言しており、政権の方針が一貫していることがうかがえる。
人事面でも大きな変化が見られる。SEC委員長代行にはマーク・ウエダ氏が就任し、次期委員長候補としてブロックチェーン推進組織の会長を務めるポール・アトキンス氏の名前が挙がっている。これらの人事は、バイデン前政権下で暗号資産業界と対立してきたSECの方針転換を明確に示すものだ。
さらに、米国通貨監理局(OCC)長官にはBitfuryの前最高法務責任者であるジョナサン・グールド氏が指名された。OCCは米国で最も影響力のある銀行監督機関の一つであり、この人事は銀行システムと暗号資産の融合を加速させる可能性がある。
これらの政策転換は、暗号資産市場に即座に影響を与えている。トランプ大統領のミームコイン「TRUMP」は大統領就任式直前に時価総額145億ドルを超え、取引所では1日に3,500万ドルを超える取引手数料が発生したという。
また、NASDAQ市場に上場している暗号資産取引所コインベースの株価も大きく上昇。トランプ大統領の当選が確実になった2024年11月6日には、前日比31.11%高の254.11ドルを記録し、1日の上昇率としては過去最大となった。
このように、トランプ政権の暗号資産推進政策は、関連企業の業績や株価にも好影響を与えている。今後、米国が世界の暗号資産ビジネスの中心地となる可能性が高まっており、グローバルな暗号資産市場の構図が大きく変わる可能性がある。
ただし、この急激な規制緩和に対しては懸念の声も上がっている。マネーロンダリングや詐欺などのリスク管理、投資家保護の観点から、慎重な対応を求める意見も存在する。トランプ政権は、イノベーションの促進と適切な規制のバランスをどのように取るのか、今後の動向が注目される。