2025年夏、サウジアラビア・リヤドで史上最大規模の格闘ゲーム大会「Esports World Cup 2025(EWC 2025)」が開催された。この大会は、世界最高賞金額を誇るeスポーツイベントとして、各国のトッププレイヤーや強豪ゲーミングチームの注目を集め、格闘ゲーム界に新たな歴史の幕を開くこととなった。今回はその中でも「鉄拳8」部門の詳細と、リヤドという地で実現した壮大なeスポーツ祭の意義について掘り下げる。
EWC 2025が際立つ最大の特徴は、圧倒的な賞金総額にある。イベント全体は前年度をさらに上回る「7,000万ドル(約100億円)」以上の賞金を用意し、鉄拳8・ストリートファイター6・餓狼CotWなど人気格闘ゲーム3タイトルそれぞれに「100万ドル(約1億5千万円)」もの賞金が割り振られた。これはこれまでのeスポーツ大会を凌駕する規模で、格闘ゲームプレイヤーとしてのキャリアにも大きなインパクトを与えるものとなった。
会場となるリヤドは、中東最大級の都市として国際的な文化交流の拠点でもあり、現地サウジアラビア皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏が強力に後援。世界中から招待されたゲーマーたちが一堂に会し、技術だけではなく、ゲームを通じたコミュニケーションと共感の場ともなった。
大会形式はグローバル基準を採用し、予選からファイナルまで極めて厳格かつ公平な構成となっている。鉄拳8部門はまず、世界各地で4か月以上にわたり予選が実施されてきた。アジア、欧米、アフリカ、南米…各地域予選を通過した精鋭たちと、招待選手計32名がリヤドの本戦に集結。大会は以下の3つの段階で進行した。
– ステージ1:32名を8グループ(各グループ4名)に分け、ダブルエリミネーションに近いGSL(グループ・ステージ・リグ形式)方式で対戦。各グループ上位2名が次ラウンドへ進出。
– ステージ2:16名を4グループに分け、同じくGSL形式で競い合う。ここで勝ち抜いた計8名が最終決勝トーナメントへ。
– 決勝トーナメント:8名によるシングルエリミネーションで覇者を決定。3位決定戦も実施され、世界的な頂点が決まる。
参加者としては前年王者のUlsan選手と世界大会の常連プロ、次世代の新星が名を連ねた。試合では、最新バージョン鉄拳8ならではの戦術的進化、高速リアクション、心理戦が会場とライブ配信で世界中の視聴者の熱狂を誘った。
この規模の大会がリヤドで開催される歴史的意味は非常に大きい。近年サウジアラビアは文化投資を国策の柱とし、ゲーミング、eスポーツ分野に積極的な資金投入を続けている。伝統的なスポーツイベントのみならず、デジタル世代に向けた国際コミュニケーションの媒体としてゲームイベントが活用され、「ゲームを通じた国際交流の都市」としてリヤドが世界に発信された。
さらにEWC 2025大会では、チーム単位のランキング戦や、獲得ポイントによる特別トロフィー制度も取り入れられた。個人技だけを競う従来の格闘ゲーム大会とは異なり、ゲーミングチームの戦略や選手育成力、地域連携も評価され、プロeスポーツのビジネスモデルの進化も目指している。
今大会の成功と反響を受けて、鉄拳8部門は少なくとも2026年まで、ストリートファイター6部門は2027年まで継続実施が予定されている。つまりリヤド発・EWCという莫大な舞台は、今後も毎年、世界のトップ層格闘ゲーマーたちの究極決戦の場となる。
こうした歴史的イベントの現地観戦には、日本を含めた複数のゲーミングチームによる応援ツアーも組まれ、世界規模のeスポーツコミュニティが現地で交流した点も見逃せない。EWC 2025は賞金規模だけでなく、世界のeスポーツシーンを大きく前進させる“国際文化プロジェクト”として、熱狂的な支持を集めている。
今後さらに発展が予想されるリヤド発信のeスポーツ大会――その最前線で起こる人材交流、技術革新、そして新たなスターの誕生から目が離せない。