VTuber業界最大手のひとつである「にじさんじ」が参加するコミュニティ大会が、近年一層の盛り上がりを見せている。その中でも、2025年10月26日に開催予定の『KZHCUP in League of Legends(LoL)』は、にじさんじのライバーによる本格的なゲーム大会として、注目を集めている。この大会は、主催者である葛葉を中心に、人気ライバー20名が4チームに分かれ、プロコーチとともにチームワークと戦略を競う、コミュニティ主導型のeスポーツ大会である。
大会の特徴と背景
この『KZHCUP in LoL』は、コミュニティとの双方向的な交流を重視したイベントだ。プロeスポーツ大会と異なり、参加者は全員がにじさんじ所属のVTuberで構成されており、各チームには視聴者と一緒に戦いを体験できるような工夫が施されている。例えば、チーム分けや対戦カードの選択は、配信を通じてファンとともに盛り上がるための“ダイス機能”なども採用されている。さらに、チャンピオンのBAN/PICKフェーズではコーチとのリアルタイムVCも認められており、戦術面でも臨場感の高い進行が期待される。
大会システムの詳細
大会は4チームによるトーナメント戦形式で実施される。1回戦および3位決定戦はBO1(1本勝負)、決勝のみがBO3(3本勝負)となる。各試合では3体のチャンピオンをプロテクト(保護指定)することが可能で、対戦相手はその中から1体のみBAN(使用禁止)できるルールとなっている。これにより、プレイヤーの得意キャラクターや個性が反映されやすくなり、VTuber間の個性やプレイスタイルのぶつかり合いがより鮮明になる。
大会前には複数回の「スクリム」と呼ばれる練習試合も実施。これは参加者が本番前にチーム練習や戦術確認を行うだけでなく、ファンにとってもVTuber同士の掛け合いや成長過程を楽しみながら観戦できるオープンな場となっている。スクリム期間中には視点ごとの配信や、コーチ・サブコーチの代打・登場といった多彩な展開も予告されているため、視聴者参加型イベントとして企画全体が持続的に盛り上がる仕掛けが施されている。
コミュニティ大会がもたらす新しい風
にじさんじの取り組みが従来のeスポーツ大会と一線を画しているのは、「大会=応援」だけでなく「大会=参加・共感」という新しい価値観に根ざしている点だ。VTuberはバーチャルキャラクターでありながら、リアルタイムでファンと密接にコミュニケーションを取れる点が特徴であり、コミュニティ大会ではその強みが最大限に活用されている。
例えば、大会本番だけでなく、事前告知配信やスクリム監視配信、本番後の振り返り配信がそれぞれ複数のライバーのチャンネルで展開され、ファンは推しの視点からチームや個人の成長、舞台裏のドラマまでも追体験できる。また、配信チャットやSNSハッシュタグ「KZHCUPinLoL」を通じ、ファン自身もイベントの盛り上げ役として機能する点も見逃せない。
他VTuberプロジェクトとの相乗効果
現在、にじさんじ以外にも多くのVTuberプロジェクトが同様のコミュニティイベントや企業コラボ、大型オフラインイベントを積極的に実施しており、結果として「VTuber×eスポーツ」「VTuber×リアルイベント」といった次世代のエンターテインメント像が形成されつつある。にじさんじの試みはその象徴のひとつであり、リアルタイム性や双方向性、そして個性のぶつかり合いといった新しい潮流を牽引する役割を果たしている。
今後の展望
『KZHCUP in LoL』のような試みが今後も定着することで、単なるゲーム大会の枠を超え、VTuberとファン、そして企業やゲームコミュニティ全体を巻き込んだ持続的な交流プラットフォームとして成熟していくことが期待される。こうしたコミュニティ大会がきっかけとなり、既存ファン層の拡大や新規VTuberファンの取り込み、新たなパートナー企業とのコラボレーションなど、VTuberカルチャー全体の成長にも寄与する可能性は極めて高い。
コミュニティ大会とVTuberコラボが巻き起こす新風――それは視聴者参加型の新しいエンタメ体験の創出であり、今後のにじさんじ、ひいてはVTuber業界の発展を占う重要なトレンドとなっている。