2025年9月29日にNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)として放送開始される『ばけばけ』は、主演を務める若手実力派女優・高石あかりが新たな視聴者層を魅了しつつある注目作である。高石は若干22歳という若さながら、映画ファンの間で高い評価を得ており、2023年には「第15回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞」を受賞。さらに2025年2月にはオーディション&エンタメ情報サイト「デビュー」が発表した「ネクストブレイクランキング」でも1位に輝いている。しかし、映画界では知られていても、テレビドラマ、とくに朝ドラの視聴層での認知度はまだ十分とは言えず、主演発表時にはSNS上で「誰?」という反応が出るなど一定の不安もあった。
『ばけばけ』は、「怪談」を愛する女性が外国人の夫と共に日常を描く物語で、これまでの朝ドラにない斬新なテーマと設定が特徴だ。前作『あんぱん』が今田美桜という全国的に知名度の高い人気女優を主演に迎え、安定した視聴率(平均16.0%)を獲得してきたことと比較すると、主演の知名度や脇を固める俳優陣の若者への訴求力の面で懸念が指摘されている。脇を固める池脇千鶴、小日向文世、岡部たかしなどの実力派は存在感があるものの、若年層に響く魅力が前作に及ばないとの見方も少なくない。
にもかかわらず、『ばけばけ』が新たな視聴者層をひきつけている背景には、高石あかりの「リアルで繊細な演技」と「独特の存在感」がある。彼女はこれまで映画で培った演技力を遺憾なく発揮し、新しい朝ドラのヒロイン像を提示しようとしている。SNSやブログ、動画配信プラットフォームなどを通じて若年層の関心を集め、映画ファンだけでなく多様な年齢層の視聴者が注目し始めているのも大きな特徴だ。とくに20代、30代の女性たちにとって、新しいタイプのヒロイン像は共感や憧れの対象となる可能性を秘めている。
演出面でも、『ばけばけ』はこれまでの典型的な「朝ドラらしさ」から一歩踏み込んだ、暗く地味めのトーンや、怪談というユニークなテーマを取り入れていることが話題を呼んでいる。これは一方で「異色作」としての評価を受けるリスクも抱えるが、テレビドラマの枠を超えた新鮮な魅力としても映る。こうした挑戦は、朝ドラファンのみならず、ドラマやホラー、ミステリー作品のファン層も巻き込み、幅広い視聴者の獲得につながる兆しがある。
また、『ばけばけ』の放送開始前の視聴者や業界関係者の間では「高石あかりの成長ぶりを見られる貴重な機会」という期待感が醸成されており、若手女優のブレイクの象徴的作品として印象づけられつつある。これは主演女優としての彼女のキャリアにとっても重要なターニングポイントとなる見込みだ。脚本や制作陣も彼女の魅力を最大限に引き出すべく意欲的な取り組みを行っている。
一方、課題としては、前作の人気俳優陣の存在感や話題性と比べると、やや地味な布陣となっている点が挙げられる。これが視聴率面でどのような影響をもたらすのかは放送後の動向を見守る必要があるが、逆に言えば、これまでの「知名度頼み」ではない演技力重視のキャスティングが、長期的には視聴者の心に残る作品を生む可能性もある。
まとめると、『ばけばけ』は主演・高石あかりの若さと演技力が新たな視聴者層、特に若年層の心を掴みつつある朝ドラである。ユニークな怪談テーマと実力派キャストの融合が、老若男女を問わず幅広い注目を浴びており、朝ドラの伝統を守りつつも新たな風を吹き込もうとしている。高石の持つポテンシャルと作品の独自性が視聴者の期待感に応えられるかどうか、今後の放送開始後の動向から目が離せない。