政府支援で進化する日本の半導体製造基盤 サプライチェーン強化へ10兆円超投入
日本政府は、半導体産業の基盤強化を国家戦略の柱に据え、2030年度までにAI・半導体分野へ10兆円超の公的支援を投じる方針を明確化した。経済産業省が推進する「AI半導体産業基盤強化フレーム」を活用し、国産生成AIモデルの開発支援や先端半導体の製造能力確保を加速させる。これにより、台湾TSMCの熊本工場での3ナノ半導体生産開始をはじめ、国内サプライチェーンの再構築が進む中、地政学的リスク低減と国際競争力向上を目指す一大転換点を迎えている。
この支援策の背景には、生成AIの爆発的普及と、それに伴う高性能半導体需要の急増がある。ChatGPTのような大規模言語モデルが社会実装される中、日本は長年、ファウンドリ(半導体受託製造)分野で後れを取っていた。海外依存のサプライチェーンは、米中摩擦や自然災害で脆弱性が露呈。政府はこれを機に、産官学連携を強化し、国内生産基盤の復活を図る。赤澤亮正経済産業相は最近の国際カンファレンスで、「技術の進展を未来の話で終わらせず、社会実装へつなげる」と強調。松本剛明デジタル相もアジア・中東との連携を視野に、グローバルなエコシステム構築を訴えた。
具体的な取り組みとして、まず先端プロセス開発が挙げられる。自民党の「半導体戦略推進議員連盟」は、2026年度本予算から毎年1兆円規模の予算確保を目標に掲げ、TSMC熊本第1・第2工場の稼働を足がかりに、2ナノ以下プロセスへの投資を拡大。Rapidus社を中心とした国産2ナノ半導体開発も、北海道千歳での工場着工を予定し、政府補助金が数百億円規模で充てられる。これにより、自動車、AIサーバー、ロボティクス向けチップの国産化比率を2030年までに30%以上引き上げる見込みだ。
サプライチェーン強化の鍵は、材料・装置分野の国内回帰。日本は世界シェア7割を占める半導体製造装置(東京エレクトロンなど)で強みを発揮するが、韓国・台湾企業向け輸出中心だった。これを「双方向型」にシフトし、韓国サムスンやSKハイニックスとの共同投資を促進。日韓企業は韓国現地での部材生産を拡大し、供給安定化を図る。また、GX経済移行戦略との連動で、半導体を16重点分野の一つに位置づけ、20兆円規模の「GX経済移行債」を活用。蓄電池やペロブスカイト太陽電池とのシナジーを生み、循環型サプライチェーンを構築する。
さらに注目されるのがAIロボティクスの波及効果。2025年10月の経産省「AIロボティクス検討会」骨子を基に、2026年3月末までに戦略素案がまとまる。供給側ではAIチップ搭載ロボットの開発を、需要側では政府の「先行官需」で導入を促進。中小企業向け補助金も拡充され、工場自動化を後押しする。これにより、半導体需要は2030年までに国内市場だけで数兆円規模に膨張する可能性が高い。
一方、課題も山積だ。巨額投資の財源確保のため、税制優遇や低利融資を組み合わせるが、人材不足が深刻。大学・企業連携で数万人のエンジニア育成を急ぐ必要がある。また、インテルやNVIDIAの動向次第で、グローバル競争が激化。インテル大野社長は「2026年にはPCの半分がAI PC化」と予測し、日本市場の取り込みを狙う。
この政府主導の取り組みは、日本半導体産業のルネサンスを象徴する。10兆円超の支援が実を結べば、サプライチェーンは「リスク耐性」の高いものに進化し、AI時代のリーダーシップを握るだろう。産業界は今、政策の波に乗り、国際標準をリードする好機を迎えている。(約1480文字)



