ドイツに本拠を置く板金加工機・産業用レーザーの世界的リーダーであるトルンプ(TRUMPF)は、日本法人を通じて半導体関連事業において顕著な成長を遂げている。2024〜25年度における世界全体での売上高は減少したものの、日本市場、とりわけ半導体分野がその業績を大きく支えている。
世界市場減速と日本市場の好調
2025年6月期(2024年7月〜2025年6月)のトルンプのグローバル売上高は、前年度比16%減の43億ユーロであり、受注高も前年度比7.2%減の42億ユーロにとどまった。地域別に見ても、ドイツ・欧米・アジアいずれの主要市場も二桁の減収が続いたが、 アジアパシフィック地域の減収幅が13.3%と比較的小さく抑えられたのは日本市場が堅調だったことが大きい。
半導体関連事業が牽引役
トルンプの主力事業は、板金加工機、レーザー技術、極端紫外線(EUV)レーザーシステム、エレクトロニクス装置の4つに大別される。その中でも 半導体製造向けの電子機器・装置分野は最も成長著しい分野の一つ。2024年度における日本法人の売上高の約4割が半導体関連事業で占められ、グローバルで減収傾向にある中、日本市場は例外的に好調を維持した。
EUVレーザーと半導体露光装置の強み
トルンプはEUV(極端紫外線)レーザー技術の先駆者であり、2005年から継続的に研究開発投資を行っている。その成果として、オランダのASML社が手掛ける次世代半導体リソグラフィ装置にトルンプのEUVレーザーが採用されている。ASMLは世界最大の半導体露光装置サプライヤーであり、この分野での連携は、トルンプのグローバル戦略・技術力の高さを象徴している。
トルンプの社長マイケル・ザムトレーベン氏は「20年近く一つのプロジェクトへの長期的な投資が可能なのは、家族経営による長期視点の経営スタイルがあってこそ」と語っている。半導体製造装置向け高精度・高信頼のレーザーシステムを供給できることが、日本をはじめとした主要市場での競争力を高めている要因である。
日本市場における事業戦略
日本法人トルンプは、「顧客第一」「高い技術力」「現地サポート体制の充実」を軸に展開している。顧客工場の近くに拠点を設けることで迅速な対応を可能とし、「高品質・高精度・高信頼性な製品提供」と「幅広いラインアップを生かした多角的な提案」こそが日本市場での差別化につながっている。
ザムトレーベン氏は「日本はTRUMPFにとって重要な市場であり、家族としても長い付き合いがある特別な存在」と強調。今後は半導体分野のみならず、保守サービスやラインアップ拡充など、きめ細かい現地対応とカスタマーサポート体制の強化で更なる成長を目指している。
今後の展望
日本を含むアジアパシフィック地域においては、半導体市場全体の成長や技術革新の加速に呼応し、トルンプの最先端レーザー・自動化技術の需要は高まっていくことが見込まれる。特に、半導体微細化を支えるEUVリソグラフィ技術は現在も世界的な注目を集めており、高精度装置で高付加価値を生み出すトルンプの立ち位置は盤石といえる。
結果として、グローバルに減収が見られる中でも日本マーケットで半導体関連事業を着実に伸ばし、高収益体質を維持しているトルンプ日本法人の戦略は、今後さらに重要度を増していくと考えられる。



