生成AIの需要拡大で日本製半導体装置が躍進――東京エレクトロンなど主要企業の最新動向
2023年以降、急速な成長を遂げる生成AI(ジェネレーティブAI)のビジネス展開は、世界の半導体需要を爆発的に押し上げている。その波は日本企業にも及び、とりわけ「半導体製造装置」を手がける日本メーカーへの注目度と需要が過去最高水準まで高まっている。本稿では、その象徴的存在である東京エレクトロン(TEL)の動向を中心に、生成AIの進化と日本製半導体装置業界の躍進について詳述する。
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生成AI普及がもたらす半導体需要の急拡大
ChatGPT、Midjourney、Google Geminiなど、生成AIは音声、画像、動画、テキストといった多様なデータを自動生成し、社会のさまざまな分野に変革をもたらし続けている。この生成AIの要ともいえるのが、巨大なデータを高速・大量に処理するための演算能力をもった半導体、特に先端ロジック半導体や大容量メモリである。こうした高度な半導体の需要は2024年から2025年を通じて急激に増加しており、新設や増設を含む大規模な半導体工場建設が世界各地で本格化した。
しかし、これら先端半導体生産には最先端の製造装置が不可欠だ。露光装置、成膜装置、エッチング装置、検査装置など、精密かつ高性能な装置がなければ、AI向け高密度回路の集積は実現しない。この分野で日本企業は伝統的に強く、世界市場の3~4割のシェアを持つとされる。
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東京エレクトロンなど日本メーカーの存在感
なかでも存在感を増しているのが東京エレクトロン、SCREENホールディングス、日立ハイテク、アドバンテストといった日本勢だ。特に東京エレクトロンは、半導体製造工程に必要な「成膜装置」「洗浄装置」などの分野で世界トップ級のシェアを占めている。
2025年には、生成AI用チップを製造する世界有数ファウンドリーが日本製の最新半導体装置を次々と導入。これによりTELやSCREENは、受注高・生産高とも過去最高を記録した。こうした日本勢の装置なしでは、今話題となっているAI用GPU、AIアクセラレータ(NVIDIA H100やGoogle TPU)の製造は支障を来すともいわれる。
また、日本の装置は高精度・高信頼性に加え、環境負荷低減や消費エネルギー最適化などの面でも強みを発揮し、ESG投資や環境規制への対応状況を重視する欧米顧客からも高評価を受けている。
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投資拡大と供給網強化
2023年から2025年にかけて、東京エレクトロンは国内に新工場やR&D拠点を相次ぎ建設。北海道・熊本・四日市など全国各地で増産体制が急ピッチで整っている。また、SCREENや日立ハイテクも展示会などで最新鋭のエッチング装置、マスクセル検査装置などを発表。これら新製品は、回路線幅1nm時代に向けた生産の安定性・精度向上・歩留まり改善を強く後押ししている。
さらに、TSMC熊本工場、ラピダス北海道工場など、日本国内の新設ラインにも、日本勢の装置が多数採用されており、関連サプライチェーンや部品供給企業も事業拡大を加速している。
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今後の課題と展望
他方で、急増する注文に対するタイムリーな納入・保守、人材確保や部材調達の課題も指摘されている。特にAIブームによる需給の変動や米中摩擦などサプライチェーンの地政学的リスクは依然として存在する。しかし、日本製装置の「不可欠性」は今後も維持され、生成AI需要のさらなる増大が見込まれる2026年以降、市場シェアや技術革新の先導役として日本企業の存在感がより強まる可能性が高い。
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このように、生成AIの需要拡大は日本製半導体装置メーカーに歴史的な追い風となっている。これを背景に、関連業界のパートナー企業や地方サプライヤーにも波及効果が生まれ、今後数年間にわたり日本の産業基盤強化と技術革新の好循環が期待されている。



