ホームゲーミングPC/ゲーム機/半導体グローバル連携が鍵:ロームとInfineonのSiC戦略

グローバル連携が鍵:ロームとInfineonのSiC戦略

ロームとInfineon Technologiesが2025年9月に発表した「SiC(炭化ケイ素)パワー半導体パッケージの共通化と相互セカンドソース契約」は、パワー半導体の産業構造とグローバル競争力の観点から非常に重要な意味を持つ。以下、本件の背景、内容、先端技術動向、グローバルサプライチェーンへの影響まで詳細に解説する。

背景:パワー半導体の転換期と日本勢の課題

SiCパワー半導体は、従来のシリコンに比べて高耐圧・高効率・高温動作を実現できる次世代パワーデバイスとして、EVや再生可能エネルギー分野で急速な需要拡大が進んでいる。しかしグローバル市場では中国勢の急成長、米Wolfspeedの経営破綻、既存大手の苦戦といった環境変化が激化している。実際、従来トップメーカーだったWolfspeedは需要未達と中国市場の台頭により、2025年6月に米連邦破産法の適用を申請。顧客であるルネサスエレクトロニクスも巨額損失を計上し、SiCの開発を一時ストップせざるを得なくなった。

このように、原材料確保や顧客安定供給、コスト低減というグローバル戦略課題は急速に高まっており、日本や欧州勢も個社単独の競争力だけでは限界が明らかになりつつあった。

取り組みの核心:パッケージ共通化とセカンドソース体制

今回、ロームとInfineonはSiCパワー半導体のパッケージ仕様を共通化し、MoU(基本合意書)を締結した。パッケージとは、半導体チップを保護し、外部との電気的接続を最適化する役割を持つ部品であり、高出力が要求されるパワーデバイスにおいては冷却効率や信頼性と直結する。両社はそれぞれ異なる強みを持つ――Infineonは多彩な表面実装パッケージ、ロームはハーフブリッジ構成の挿入型SiCモジュール(DOT-247)――を有していた。

この合意により両社は以下を実現する。

– 共通パッケージでの製品提供:顧客は、同一仕様のモジュールをロームとInfineonのどちらからも購買可能となる。
– セカンドソース保証:万一一方のサプライチェーンに障害が発生した場合でも、もう一方から安定供給を受けられる安全網ができる。
– 顧客のリスク低減および設計流用性向上:供給リスクの分散、開発期間短縮、設計者の負担減などにつながる。

今回の共通パッケージ化とセカンドソース体制構築は、グローバルで大型プロジェクトを動かすための「業界標準化」への布石ともいえる。大量供給と信頼性、サプライヤー分散を同時達成するスキームは、車載・産業用途で求められる品質要件に応える上で不可欠となりつつある。

グローバル連携の波及効果と産業全体への示唆

この協業は、日独それぞれを代表するパワー半導体大手による連携である点でも特筆すべきだ。近年の半導体市場では、特定地域やメーカーへの依存リスクが地政学的にもクローズアップされている。一方で、自国優遇色を強める「半導体のブロック経済化」も進行しているが、パワー半導体のような基幹産業部品では、むしろグローバル連携・協業が持続的成長の必須条件となっている。

事実、両社は共通パッケージ化によって、
– 生産規模の拡大によるユニットコストの低減
– 設計標準の提示による顧客囲い込み
– 短納期対応力や柔軟な生産体制の構築
という効果も同時に期待している。

今後の展望と課題

技術的にも、パッケージの標準化は「低損失・高耐久パワーモジュール」の開発競争を一段と加速させる。EV充電インフラや再生エネの大規模化、データセンターの省エネ化などで、高効率SiCパワーデバイスの引き合いは今後さらに強まるだろう。加えて両社は今後、制御ICやシステムソリューション領域での協業拡大にも含みを持たせている。

ただし、競争優位性維持や自社技術の差別化、競合他社との差別化戦略も引き続き課題となり得る。技術流出防止や独自性確保への取り組みも不可欠だ。

まとめ

ロームとInfineonのSiCパッケージ共通化・相互セカンドソース契約は、グローバル規模のサプライチェーン強化と産業標準化を両立させる、極めて先進的なグローバル連携戦略である。エネルギー転換を背景に、今後も自社技術の深耕と同時に、欧州・日本の枠を超えた産業基盤強化が急務となることは間違いない。

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

人気の記事

VIEW ALL ⇀