2025年の最新調査によれば、ラテンアメリカと欧米地域での暗号通貨取引量が堅調に拡大し続けている。とくにラテンアメリカは前年比63%増という急激な成長を遂げ、欧米も高い流通規模を確保している。この記事では、その背景、地域ごとの特徴、成長の要因、今後の展望について詳しく解説する。
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ラテンアメリカでの暗号通貨取引拡大の背景
ラテンアメリカは2024年から2025年にかけて前年比63%の取引量増加という目覚ましい拡大を記録している。とくにこの地域では、伝統的な法定通貨の不安定さやインフレーションの高騰が顕著だ。たとえば、アルゼンチンやベネズエラなど、一部の国では年間インフレ率が数十%から数百%に上ることがあり、通貨価値が急速に下落する懸念が長年続いている。こうした社会・経済状況により、住民や企業は資産の保全手段としてビットコインやステーブルコインなどの暗号通貨を積極的に利用するようになった。
特筆すべきは、単なる投資目的だけでなく、実生活の中での支払い手段や海外送金、Eコマース決済など、「実需」ベースで暗号通貨が浸透している点だ。銀行口座を持てない人や送金手数料が高額な国際送金市場で、暗号通貨の利便性と低コストが大きな支持を集めている。こうした需要の拡大により、草の根レベルでの普及が今後も加速すると見込まれる。
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欧米地域での動向と特徴
欧米(北米・欧州)では、ラテンアメリカほど成長率は高くないものの、総取引量規模では世界最大級を維持している。北米の2024年取引量は2.2兆ドル、欧州は2.6兆ドルに達している。同地域の成長を牽引している大きな要因として、「規制の明確化」が挙げられる。特に米国では、2024年に米証券取引委員会(SEC)がスポット型ビットコインおよびイーサリアムETF(上場投資信託)を承認したことで、伝統的な証券市場と同等の枠組みで暗号通貨取引が可能になった。
この動きは、機関投資家による暗号通貨市場への本格的な参入を促し、従来よりも大規模・効率的な資金流入を実現した。また、各国での法規制整備や監督体制強化も、投資家の安心感を高め、安定取引の増加に寄与している。欧州でも、国際送金・決済、ステーブルコイン利用などが拡大し、仮想通貨の多様な利用形態が社会に定着しつつある。
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「草の根実需」と「機関投資」の二極化
ラテンアメリカと欧米の暗号通貨市場には、はっきりとした二つの潮流が見て取れる。
– ラテンアメリカは一般消費者・中小企業による「草の根」利用(生活決済、送金、貯蓄)が中心。
– 欧米は機関投資家や富裕層を中心とした「投資商品」としての利用・拡大が主流。
この二極化は、今後の世界的な暗号通貨市場の成長において、どちらも不可欠な柱となるだろう。草の根実需が市場の裾野を広げ、機関投資による流動性と市場規模の拡大が安定性を高めるという補完関係が生じている。
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ステーブルコインの急増と社会変革
ラテンアメリカで顕著なのは、「ステーブルコイン」の普及だ。ステーブルコインはドルなどの安定した通貨に価値が連動する暗号資産であり、現地通貨に対するヘッジ手段として利便性が高い。これにより、ボーダーレスな資金移動や物価急変リスクの低減など、生活やビジネスの安定性確保に大きく寄与している。
さらに、銀行口座を持たない層や既存金融システムから切り離された市民にも、新たな金融アクセスをもたらしている。これは金融包摂の観点でも社会的意義が大きい。
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今後の展望とまとめ
暗号通貨市場の拡大は、地域ごとの実情に強く左右される。「草の根実需」が強い新興市場(ラテンアメリカ)と、「機関投資主導」の先進市場(欧米)の双方が、世界全体の暗号通貨取引量拡大を牽引している。規制動向、国際金融情勢、技術革新によるサービス向上など、多様な要因を背景に堅調な成長が続く見通しであり、今後も両地域の動向が世界市場を左右することになるだろう。
また、実需による生活インフラ化・投資商品の成熟化という「二極化現象」が今後も強まることにより、暗号通貨は一過性のブームではない、持続可能な経済基盤となり始めている。