2025年10月14日、タイ・バンコクで開幕する「VCT Ascension Pacific Bangkok 2025」は、アジア太平洋地域のVALORANT競技シーンを牽引する重要な国際大会である。本記事では、今年大会の最大の注目ポイントである「新興勢力RIDDLE ORDER(日本)」初出場の意義について、制度改革、地域進出、競技レベル向上という観点から詳しく解説する。
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RIDDLE ORDER初出場による日本シーンの転機
これまで日本発の代表格といえばZETA DIVISIONやDetonatioN FocusMeなど限られたクラブだったが、2025年、RIDDLE ORDERがついにVCT Ascension Pacificの大舞台へ進出する。彼らの予選突破は、日本チームの競争力向上が制度改革や底上げと密接に関連している事実を証明している。
RIDDLE ORDERは本戦グループBに組み込まれ、初戦で東南アジアの強豪NAOS Esportsと顔を合わせる。同グループには、韓国のNongshim RedForce、FULL SENSE(タイ)、Velocity Gaming(インド)といった、いずれも地域予選で並みいる強豪を撃破してきたクラブが顔を揃え、「死のグループ」と評されている。
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大会形式:より実力が反映される構造改革
昨年からルールが微調整され、大会はまず10チームが2グループ(A/B)に振り分けられるグループステージから始まる。各グループの上位3チームがプレイオフに進出する仕組みで、グループ1・2位はアッパーブラケット(勝者側)、3位はロワーブラケット(敗者側)からスタート。敗者復活要素を持ちながらも、BO3(3マップ先取)で全体の競技性や戦術の多様性が強調される。
さらにアッパーブラケット決勝、ロワーブラケット決勝はBO5(5マップ先取)で実施され、適応力や選手層の厚みが試される高い要求水準のシリーズだ。
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「昇格」レースとプロへの最短ルート
このAscension Pacificを制して上位2位に入賞すると、翌年VCT Pacific 2026という世界最高峰リーグへの参入権が付与される。既存パートナーチームへ昇格する唯一のルートという点で、各出場チームや選手たちのプロ意識・モチベーションは極限まで高まっている。
RIDDLE ORDERは日本国内でもトップレベルの戦術・情報収集力・個々のaim力で知られており、特にエースのSyuheii選手、IGL(インゲームリーダー)のAsuga選手は、国内リーグでは安定したパフォーマンスを年間通じて披露してきた。
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地域進出の現実と課題
他方で、日本チームがアジア太平洋予選を突破して本戦出場権を得ることは、独立リーグ制の「壁」と実力水準の“ギャップ”という大きな課題を示唆する。たとえば韓国や東南アジアのトップ層は、既に国際舞台での「経験値」と緻密なチームファイトのレベルで全体をリードしている。RIDDLE ORDERにとっても、これまで対戦機会の少なかったオセアニアや南アジア・韓国勢との競技的“読み合い”が大きな試練となるだろう。
また、国内シーンではBo1〜Bo3中心の大会経験しかなかったRIDDLE ORDERに対して、BO5にも対応するための準備や、長丁場でのメンタルケア、アウェイ環境での適応といった新たな課題が突き付けられている。
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期待される成長と文化的インパクト
RIDDLE ORDERの本戦進出は、若年層新規ファン増を含む日本VALORANTコミュニティの活性化に直結している。加えて、国内スポンサーや大会オーガナイザーにとっても、次世代コンテンツ育成・ esports文化振興の観点から好材料となる。
またRiot Gamesや配信プラットフォーム各社も、現地タイ・バンコクでの大規模なオフライン観戦イベントおよび、グローバル同時配信体制を強化しており、東南アジアをはじめとする多国籍ファンの一体感醸成にも繋がっている。
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今大会の見どころ
RIDDLE ORDERのグループリーグ突破なるか─初戦のNAOS Esports戦で「序盤の主導権」を握れるかどうかが突破の鍵となる。
国内外トップ層との戦術バトル─従来日本チームが苦手とされていたアグレッシブな攻めの対応力進化が問われる。
BO5フォーマットへの適応─長丁場で選手やスタッフがどのように調整力・対応力を発揮するか。
オフライン開催による現地熱狂─コロナ禍を経ての現地観戦復活、ファン・選手双方のリアルな熱量に注目が集まる。
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VCT Ascension Pacific Bangkok 2025は、RIDDLE ORDERを筆頭とした新世代の台頭と、アジア太平洋全体の競技水準向上、その文化的拡張性までも体現する意義深い大会であり、今後の日本esportsの未来を占う重要な一戦となる。