XR（拡張現実）やメタバース技術が政治とエンターテインメントの現場をつなぎ、新たな公共空間とファン体験の創出を加速させている様子が「未来を創る：XR&メタバース東京フェア2025」で鮮明に示された。特に注目されたのは、AIエージェントと連動したメタバース空間の活用で、これにより政治的コミュニケーションやエンタメの新しいあり方が具現化しつつあることである。
このフェアで紹介された株式会社ワントゥーテンが開発するAIエージェント「QURIOS AGENT」は、メタバース展示会の案内役を務め、参加者との双方向コミュニケーションを実現している。これは単なる人混み案内や案内板のオンライン版ではなく、高度なAIで個々の興味や質問に応じたパーソナライズされた対応を可能にし、参加者一人ひとりに細やかなフォローアップを行う新世代の対話体験を提供している。この機能は、政治やエンタメのイベントにおいて来場者の理解や関心を深めるツールとして注目されている。メタバース空間では、政治の公聴会や意見交換会、さらにはライブパフォーマンスやファンミーティングなど多様な用途が想定され、AI案内が場をスムーズに誘導しながら質を担保する役割を果たしている。
また、政治分野においては、社会課題の解決を掲げる官民連携事業として、総務省が2025年9月に出した「社会課題の解決に向けたメタバース導入の手引き」と連動し、政策対話や地方創生、災害対応訓練などにXR技術が積極的に応用されている。特に大阪や沖縄の事例からは、伝統文化とデジタルテクノロジーを融合させた地域活性化の実現が報告されており、メタバースが単なる仮想空間を超えて、現実社会の政治課題に挑む実用的プラットフォームとして成長している状況が浮かび上がる。例えば沖縄では、リアルの地域イベントとデジタル空間を繋げるメタバースフェス「OKIVFES」が開催され、地域住民や関係者がバーチャル上で交流しつつ文化発信や災害防備の情報共有を行うなど、政治的な連携機能も果たしている。
エンターテインメント業界においては、XR技術がライブイベントやゲームを超えたファンとの「新しい接点作り」に革新をもたらしている。従来の映像配信やリアルイベントに加え、メタバース内でのバーチャルコンサートやイベントが増加し、アーティストやタレントが物理的な制約を超えて多様な参加者と直接交流できる機会を生んでいる。たとえば、NON STYLE井上や松井愛莉といったタレントが参加した未来予測イベント「Digital Space Conference 2025」では、「本質的に人を好きになる時代がやって来る」という展望が示され、デジタル空間における人間関係やファンエンゲージメントの深化が議論された。
これに関連し、XR・メタバース技術を統合支援するプラットフォームとして、専門家が技術顧問に就任するなど産学連携の動きも加速している。東京大学大学院 前真之准教授が技術顧問を務める企業は、住まい選びや都市のあり方を技術的視点から解説しつつ、XR技術が政治・社会制度の新たなコミュニケーション基盤として期待できることを示唆している。
このように「未来を創る：XR&メタバース東京フェア2025」は、単なる技術展示の枠を超えて、政治とエンタメの融合を深化させる社会的・文化的な潮流の大局を示した。AIエージェントやXR環境の実装が、今後の市民参加型政治、地域連携、文化発信、そしてエンターテインメントのあり方を根本的に変革し、より包括的でインタラクティブな未来を切り拓いていることを印象づけている。
