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EV化と環境規制強化が半導体需要を後押し

EV化(電気自動車化)と環境規制強化は、世界の半導体需要をかつてない規模で押し上げる強力な要因となっている。特に欧州や中国、日本が主導する厳格な規制や政策誘導は、車載半導体を中心に新たな成長市場を創出しており、自動車産業だけでなく半導体サプライチェーン全体の構造改革も促している。

EV化の進展と半導体需要の構図

電気自動車(EV)は従来型の内燃機関車両に比べ、制御、モーター駆動、エネルギーマネジメント、インフォテインメント、ADAS(先進運転支援システム)など多岐にわたる電子制御システムを搭載する。その結果、現代の車両1台あたりの半導体搭載数は飛躍的に増加している。

例えば、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)によると、1974年に登場した「ゴルフ」初代モデルには約30個の半導体素子しか搭載されていなかったが、最新のゴルフでは8,000個、完全な電動化モデル「ID.7」ではなんと18,000個の半導体が組み込まれている。このような「車のIT化/ソフトウェア化」の流れは、EV化の加速とともに一層顕著になっている。

環境規制強化と技術革新

欧州連合(EU)や日本、中国などでは、2030年前後をめどとした温室効果ガス排出規制の強化、EVへの移行目標が設定されている。日本では2013年比で2030年までにCO2排出量46%削減という極めて高い目標が掲げられ、運輸部門、とりわけ自動車分野のクリーン化が急務となった。

こうした厳しい環境政策を背景に、電気自動車用バッテリーの固体電解質や高出力パワー半導体など、次世代デバイスの開発・実装が加速。全固体電池などの採用は、バッテリーの容量・安全性能向上といったEVの根幹技術革新に直結し、そのための新素材・新半導体の需要が拡大している。

実際、2023年には日本国内でのEV生産台数が100万台を超え、主要自動車メーカーも全固体電池の遅滞なき導入を表明している。

サプライチェーン改革と標準化の動き

半導体の多様化・複雑化は調達リスクやコスト増という課題も浮き彫りにしたため、大手自動車メーカーと新興EVメーカーが合弁で調達基準の見直しや標準化の取り組みを推進している。フォルクスワーゲンとリビアンの出資による「RVテック」社では、50以上の半導体カテゴリーでガイドラインを制定。

この調達モデルにより
– 製品ラインアップの簡素化
– コスト削減
– サプライチェーンの強靭化
– 透明性向上

などが目指され、特にマイクロコントローラーユニット(MCU)、パワートランジスター、プリント配線板などEV内部基幹装置向け半導体供給体制が強化されつつある。

変化の主導要因となる車載半導体

車載半導体はEV化・環境対応を背景に、今後も成長加速が見込まれる。パワー半導体や各種センサー、AIプロセッサ、通信モジュール(5G/6G対応)、バッテリーマネジメントICはEVの中核技術であり、世界の半導体メーカーや素材企業がこの市場を主戦場と位置付け投資を増加させている。

住友電気工業やトヨタなど日本勢も、全固体電池用の高効率・高信頼な硫化物系固体電解質の量産化や、氷点下でも動作する全固体電池試作機などで世界をリード。一方、米欧ではカーメーカー自ら半導体調達・設計・仕様策定に深く関与する動きが拡大している。

今後の展望と課題

半導体業界にとって、EVと環境規制は新たな牽引役。一方で

– 需要急増による供給不足リスク
– 素材価格高騰やエネルギーコスト増
– 標準化とカスタマイズの最適バランス確保

など、中長期的な課題も残る。

それでも、「クリーンなモビリティ」と「高信頼ICTインフラ」の融合を支える車載半導体やバッテリー材料市場は、政策後押しと技術革新により、2030年にかけてかつてない成長局面に突入している。EV化・環境規制強化=半導体産業の進化“加速装置”となる現象が、産業と社会をダイナミックに変貌させている。

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