2025年9月18日に開催された「自治体メタバース最前線トーク」イベントに、鹿児島県日置市が初参戦したことが注目されています。このVRChat上でのオンラインイベントは、自治体によるメタバース活用の現状や課題を語り合う場となり、地域活性化を模索する地方行政の新たな挑戦を象徴しています。
イベントでは、VRChatの特徴や自治体がメタバースを活用する意義が紹介されました。VRChatはアバターと呼ばれる3Dの仮想人物を使い、利用者が自由に交流や体験を楽しめるプラットフォームであり、地域の魅力発信や観光PR、住民参加型のプログラム展開に活用されています。とくに、今回登壇した4自治体のうち、神奈川県横須賀市の「メタバースヨコスカ」プロジェクトが成功例として詳細に語られました。
横須賀市は2023年10月からVRChat上に「DOBUITA&MIKASA WORLD」と「SARUSHIMA WORLD」という2つのバーチャルワールドを構築し、これまでに累計来訪者数20万人超を記録しています。これは地域の観光資源や文化を仮想空間にリアルに再現し、メタバースならではの新しい体験を提供する試みです。また、地元の名産品やファッションアイテムのデジタル3Dモデルを無料配布し、ユーザーの着用やイベントでの活用を促進しています。加えて、大人気ゲームとのコラボレーションや人材育成を目的としたメタバース教育プログラム「メタバースヨコスカEDUCATION」も展開し、地域の活性化とデジタルスキルの底上げを同時に進めている点が特徴的です。
日置市もこの流れに乗り、メタバースの可能性を活かした地域振興や交流促進を目指しています。今回のトークイベントでの発言からは、地域特性を反映させた仮想空間づくりの重要性や、デジタル地方創生に向けた課題も浮き彫りになりました。限られた人員や技術環境のなかでどう活用効果を最大化するか、多様化する利用者ニーズにどう応えるかなど、自治体間で知見を共有しながら前進しようという意欲が感じられました。
このほか、参加自治体はVRChatに加え、clusterなど複数のメタバースプラットフォームにも進出しており、相互補完の取り組みが進行中です。メタバース上での地域イベントや教育活動、観光案内を通じて、現実の地域との結びつきを強化する試みが今後も増えていく見込みです。
今回の「自治体メタバース最前線トーク」は、地域自体の魅力や文化をデジタル空間で発信・体験の多様化を図る新たな自治体戦略の一端を示しました。地方自治体がデジタル変革の波に乗り、VR技術を活用して地域活性化を果たそうとする動きは今後も加速していくものと期待されます。