中国発の生成AIモデル「DeepSeek-R1」が春節期間に大ヒット、アプリストアを席巻
中国のAIスタートアップ企業、深度求索公司(DeepSeek)が開発した最新の生成AIモデル「DeepSeek-R1」が、2025年の春節(旧正月)期間中に爆発的な人気を博し、各国のアプリストアで上位にランクインする大ヒットとなった。
DeepSeek-R1は、2025年1月20日にiOSとAndroid向けの無料チャットボットアプリとしてリリースされた。このアプリは、数学的推論や論理的思考、リアルタイムの問題解決に特化して設計されており、ユーザーからの複雑な質問や課題に対して、詳細な思考プロセスとともに回答を提供する。
春節期間中、多くの中国人ユーザーがDeepSeek-R1を活用し、「友人への新年のあいさつ文を書いて」「春節をテーマにした詩を作って」「この数学の問題を解いて」といった要望に即座に対応する能力が高く評価された。その結果、リリースからわずか1週間後の1月27日には、米国のiOS App Storeで無料アプリダウンロード数ランキング1位を獲得。これは、長らくトップを維持してきたOpenAIのChatGPTを抜いての快挙となった。
DeepSeek-R1の成功は中国国内にとどまらず、グローバル市場でも大きな反響を呼んでいる。Bloombergの報道によると、DeepSeekのアプリは140以上の国と地域のアプリストアでダウンロードランキングのトップに立った。この急激な人気の高まりは、NVIDIAの株価にも影響を与え、同社の株価が18%下落するという事態も引き起こした。
DeepSeek-R1の特筆すべき点は、その高度な推論能力と多言語対応にある。特に数学や科学の分野での問題解決能力は、他の主要なAIモデルを凌駐するとされている。例えば、アメリカ数学招待試験(AIME)やMATHなどのベンチマークテストにおいて、OpenAIのGPT-4を上回る成績を記録したと報告されている。
また、DeepSeek-R1は最大128,000トークンのコンテキスト長を持ち、長文の入力や複雑な会話にも対応可能。さらに、多言語での一貫した応答を生成する能力も備えており、グローバルユーザーのニーズに応えている。
DeepSeekの急成長の背景には、中国政府の支援や規制緩和も影響していると見られている。中国は自国のAI技術発展を重視しており、DeepSeekのような国内企業の成功は、国家戦略としてのAI産業育成の成果とも言える。
一方で、DeepSeekの急速な普及に伴い、プライバシーやデータセキュリティに関する懸念も浮上している。2月上旬には、DeepSeekのオンラインデータベースの1つが一時的に公開状態になり、ユーザーのチャット履歴や重要なデータが漏洩した可能性が報告された。この問題に対し、DeepSeekは迅速に対応し、セキュリティ強化に努めているとしているが、ユーザーの信頼回復が課題となっている。
DeepSeek-R1の成功を受け、中国の大手通信会社3社がDeepSeekのAIモデルの導入を発表するなど、産業界での採用も進んでいる。自動車産業でも、ECARXがDeepSeek-R1を車載AIシステムに統合すると発表し、AIの実用化が加速している。
DeepSeek-R1の爆発的な人気は、中国のAI技術が世界レベルに達したことを示す象徴的な出来事となった。今後、OpenAIやGoogle、Meta AIなど、欧米の大手テック企業との競争がさらに激化することが予想される。DeepSeekが今後どのように進化し、グローバル市場でのシェアを拡大していくのか、AI業界の注目が集まっている。