SEMICON West 2025がフェニックスで初開催、過去18年で最大規模の展示会に
2025年10月7日から9日にかけて、米国アリゾナ州フェニックスで開催された「SEMICON West 2025」は、半導体業界にとって歴史的な転換点を象徴するイベントとなった。1970年の創設以来、長年サンフランシスコで開催されてきた本展示会が初めて開催地を変更し、しかも過去18年間で最大規模となったことは、米国半導体産業の地理的・戦略的シフトを如実に物語っている。
前年比60%増という驚異的な登録者数の伸びは、AI需要の爆発的拡大と半導体産業への関心の高まりを示している。SEMIのアジット・マノチャ会長兼CEOは開幕挨拶で、業界が直面する地政学的不安定性、技術転換点、エネルギー問題、人材不足、分断されたグローバルサプライチェーンといった多様な課題に言及しながらも、これらの障害は個々のCEO、企業、国家だけでは克服できないものであり、業界全体の協力が不可欠であると強調した。
地政学と貿易環境の劇的な変化
今年のSEMICON Westでは、貿易条件と地政学的環境が過去1年間で劇的に変化したことが重要なテーマとなった。10月6日に開催されたマーケットシンポジウムでは、7名の業界専門家が関税、米国の貿易条件、そして他国や製品市場への影響について多角的な分析を提供した。
特に注目されたのは、台湾企業による米国への投資環境の変化である。PwCのポール・ポリアコフ氏は、施設建設コストの上昇に加え、複雑で威圧的なコンプライアンスや貿易規制が米国への投資を困難にしていると指摘した。一方で、米国下院で3月に可決された「米台迅速二重課税軽減法」が上院でも通過すれば、投資負担の軽減につながる可能性があると述べた。
イベント全体を通じて、サプライチェーンの地域化が重要なテーマとして浮上した。企業や政府は、現在の分断された半導体サプライチェーンがもたらす国家安全保障上の影響を認識し始めており、可能な限り重要な製造プロセスを自国の国境内または近隣に移転させる動きが加速している。
持続可能性への取り組みと気候目標
10月7日に開催されたパネルディスカッション「成功への道-半導体が強靭な未来をリードする」では、業界の持続可能性への進捗が議論された。アプライド・マテリアルズの気候プログラムディレクターであるエレナ・コッカロフスキー氏は、政策、規制、変化する基準に気を取られることなく、気候目標に集中することの重要性を訴えた。このメッセージは、持続可能性への取り組みにおいて本質的な課題に焦点を当てる必要性を強調するものであった。
SEMICONウェストの基調講演では、持続可能性の課題に対処するための主要なアプローチとして、AIを活用して気候データを改善し、より情報に基づいた行動を取ることが提案された。マイクロンのエリザベス・エルロイ氏は、老朽化したインフラをより持続可能な設備に置き換える機会や、よりエネルギー効率の高い製品を構築することの重要性を強調した。
業界全体での協力体制も印象的であった。SEMI財団が運営する連邦プログラムである「全米マイクロエレクトロニクス教育ネットワーク」などの人材育成協力や、SEMIの半導体気候コンソーシアムによる脱炭素化の加速に向けた取り組みが紹介された。グローバル半導体アライアンスも同様の進展を見せており、業界全体が持続可能性に向けて動き出していることが明確になった。
今回のSEMICON Westは、わずか1年間で物事がいかに急速に変化するかを改めて実感させる場となった。開催地の変更、規模の拡大、そして議論されたテーマの多様性は、半導体業界が新たな時代に突入したことを示している。