日本の自動車産業におけるパワー半導体の拡大:EV時代への戦略的対応と最新技術動向
日本の自動車産業は、世界でも類を見ない技術力と品質管理の高さを誇り、グローバル市場で常にトップを走り続けてきた。2025年、世界規模でのEV(電気自動車)市場の急成長を背景に、特に自動車用パワー半導体の重要性と拡大が顕著になっている。今回はその最新状況について、「48V技術」を核とした日本の半導体メーカー、新電元工業の動きを中心に掘り下げる。
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48V技術を核に多様化する自動車用パワー半導体
新電元工業は、東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2025」に初出展し、「みらい ひろげる 48V」をテーマに掲げ、多彩なソリューションを発表した。48V技術は、パワー半導体の活用シーンを大きく広げる技術であり、電動車両の効率化・小型化・持続可能性向上に貢献するものだ。従来の12Vシステムから一歩進化した48Vシステムは、より高効率なエネルギー制御、電動化部品の低消費電力化、そして車体全体のスマート化支援に直結する。
特にEVにおいては、バッテリー、モーター、各種制御装置の間で膨大な電力をやり取りするため、高性能パワー半導体は車両自体の性能と安全性、さらには環境対応力の根幹を担う。そのため、国内半導体メーカーによるパワー半導体の開発競争は熾烈を極めている。
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新電元工業の技術革新:持続可能社会への貢献
新電元工業は1949年の設立以来、パワーエレクトロニクス分野で独自性を追求し続けてきた。半導体技術・回路技術・実装技術を融合させた同社は、世界でも稀な技術プラットフォームを持つ。2025年の展示では、48Vを軸にしたパワー半導体の最新開発品だけでなく、力覚センサレスの力制御技術、画像識別技術、非接触充電技術など、次世代モビリティに不可欠な周辺技術も積極的に提示した。
特筆すべきは、車載向け技術を応用して開発されたロボット「シンディ」の披露である。このロボットは、同社のパワーエレクトロニクス技術を集結させた製品であり、電動化時代の安全性・効率性・知能化の象徴と言える。
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EV時代の産業構造変化と日本企業の戦略
EVシフトが加速する中、パワー半導体の需要は世界的に急増している。車両一台あたりの半導体搭載数は年々増加し、従来の内燃機関車と比較しても桁違いの規模となっている。日本の半導体メーカーは、設計・製造技術の高度化を推進し、信頼性・長寿命・高安全性を両立する製品開発に注力している。
48V技術や高耐圧パワーモジュールの進化、パワー半導体の小型化・高効率化は、日本の自動車産業のグローバル競争力維持に不可欠だ。一方、EV普及にともなう電力制御技術の重要性、バッテリー性能との相乗効果、システム全体の最適化ソリューションが今後ますます求められる。
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今後の展望と日本の課題
EV拡大はパワー半導体の市場を飛躍的に拡大させる一方、世界では中国・欧州企業による技術革新も著しい。日本が優位性を維持するためには、基礎技術の深化だけでなく、量産能力強化、性能保証のさらなる高度化、カーボンニュートラル実現に資する新材料の開発が欠かせない。
そして、48V技術を中心とした新世代パワー半導体は、乗用車・商用車はもちろん、次世代ロボットやスマートインフラにも応用される可能性を秘めている。今後、日本メーカーの技術力と総合提案型のイノベーションが、持続可能なモビリティ社会の根幹を担うことになる。
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EV時代の到来は、日本の自動車産業にとって第二の創業期と言われるほどインパクトをもたらしている。パワー半導体の拡大と技術革新を軸に、日本企業が世界を牽引する役割は今後ますます大きくなることが期待される。



