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AI時代の夜明け:FCBGA基板市場を制する新興勢力たち

AI時代の夜明けを象徴する分野の一つが、FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)基板市場である。その最前線では、韓国・中国勢を中心とする新興勢力が従来の日本・台湾系主軸メーカーの構図を大きく揺るがしている。ここではその中でも、中国の長電科技(JCET Group)が示した急速な台頭を取り上げ、AI時代におけるFCBGA基板市場の変容と、その背後にある競争の本質に迫る。

AI半導体の拡大とFCBGA基板の転機

近年、FCBGA基板は高性能AI半導体のパッケージ基板として不可欠な存在となっている。従来はインテルやTSMC、日台の基板大手が市場を主導してきたが、エヌビディアやブロードコム、さらにはアマゾンやグーグルなどハイパースケーラー各社による自社設計ASIC向け需要の爆発的増加により、パッケージ基板市場は激変。そのなかで各メーカーは顧客戦略、サプライチェーン、技術開発の全方位で体制を見直している。

特に注目されるのが、世界最大級の半導体後工程一貫受託メーカーである長電科技(JCET Group)だ。彼らは近年、FCBGA基板とパッケージの分野で急速なシェア拡大を記録し、市場構造を塗り替えつつある。

JCETの戦略と成長

JCETは2025年前三四半期(1~9月)において、研究開発費を前年同期比24.7%増の15億4,000万元(約320億円)まで大幅に拡大し、先端封装分野への攻勢を強めている。とりわけ、大型FCBGAパッケージ技術、高密度システムインパッケージ(SiP)、光電合封(CPO)、ガラス基板化といった最先端領域で次々と新技術を投入し、複雑かつ大量の信号・電力配線要求に応えている。

この結果、2025年Q3の売上高は過去最高を記録。AIサーバー向け高性能チップ、データセンター、ネットワークインフラ、通信・車載用など複数領域で実績を残している。こうした積極的な投資と開発により、中国のみならずグローバルメーカーからも存在感が増しつつある。

日台系 vs 韓中系:新・基板覇権争い

AI半導体の市場拡大によって基板の需給逼迫が続く中、部材調達や生産能力確保は短期的な障壁となっている。そのなかで、日本や台湾勢が伝統的な強みである高品質・高信頼性・精密量産力を武器にする一方、韓国勢(例:サムスン電機、LG Innotek)、中国勢(JCET、AT&S中国工場など)は「設備投資の迅速化」「コスト優位性」「現地大手半導体メーカーとの連携強化」を前面に打ち出し、市場シェアを急拡大させている。

特にJCETは、国内外の部材企業やサーバー/AI半導体メーカーと緊密に連携し、中国内での地産地消モデルも強化。加えて中長期でのグリーンテック基板(低環境負荷)、CPO(光+半導体一体封止)といった技術革新で、新興領域需要への対応も着実に進めている。

今後の展望

AI時代の加速とともに、FCBGA基板はシリコンの性能を最大化し、ハイエンドサーバー・AIワークロードを支えるコア部材としてさらなる高密度化・高多層化・熱マネジメント技術が求められる。その中でJCETのような積極投資型企業は、従来勢力を脅かす新たなリーダー候補として台頭を続ける。

この構造変化はグローバル半導体産業におけるサプライチェーン再編や、先端パッケージ技術のイノベーション競争、さらには地政学的リスクの再配分にも大きく影響する可能性がある。AI時代のFCBGA基板市場は、今まさに「夜明け」「戦国時代」へ――。新興勢力の動向から目が離せない。

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