半導体市場、2025年に7000億ドル突破へ – AIと自動運転が成長をけん引
世界半導体市場が2025年に7000億ドルの大台を突破する見通しとなった。世界半導体市場統計(WSTS)の最新予測によると、2025年の世界半導体市場規模は前年比11.2%増の6971億8400万ドルに達する見込みだ。この成長を牽引するのが、人工知能(AI)と自動運転技術の急速な進展である。
半導体市場は2024年にも前年比19.0%増の6268億6900万ドルと大幅な成長が予想されており、2年連続で過去最高を更新する勢いを見せている。この背景には、AIブームに伴う関連デバイスの需要拡大がある。特に、大規模言語モデル(LLM)の学習や推論に不可欠なGPU(画像処理半導体)やHBM(高帯域幅メモリ)の需要が急増している。
AIの進化は半導体産業に革命をもたらしつつある。従来のCPUやメモリに加え、AI専用チップの需要が急速に拡大。NVIDIAのGPUが市場を席巻する一方、GoogleのTPU、AmazonのTrainium/Inferentiaなど、クラウド大手各社も独自のAIチップ開発に注力している。さらに、AppleやMeta、OpenAIなども自社設計のAIチップ開発を進めており、AI半導体市場の競争は一層激化している。
自動運転技術の進展も半導体需要を押し上げる大きな要因となっている。自動車の電子化が進む中、特に先進運転支援システム(ADAS)や自動運転機能の実現には高性能な半導体が不可欠だ。1台の車に搭載される半導体の数は年々増加しており、高度な自動運転車では数千個の半導体が使用されるという。
自動車向け半導体市場では、従来の車載マイコン(MCU)に加え、AI処理に特化したSoC(システムオンチップ)の需要が拡大している。NVIDIAのOrin、Qualcommの Snapdragon Ride、Intel MobileyeのEyeQシリーズなど、自動運転向けの高性能SoCが続々と登場している。さらに、電気自動車(EV)の普及に伴い、パワー半導体の需要も急増している。
半導体各社は、この成長市場を見据えて積極的な投資を行っている。TSMCは2025年までに約1000億ドルを投じて先端製造プロセスの開発と生産能力拡大を進める計画だ。Samsungも3年間で約1510億ドルの投資を発表しており、半導体製造能力の増強を図っている。
一方で、地政学的リスクや供給chain再編の動きも市場に影響を与えている。米中対立を背景に、各国政府は国内での半導体生産能力強化を推進。米国のCHIPS法、EUの半導体法、日本の経済安全保障推進法など、半導体産業への支援策が相次いで打ち出されている。
このような急速な市場拡大と構造変化の中、半導体各社には柔軟な戦略が求められている。AI・自動運転向けの高性能製品開発はもちろん、製造プロセスの微細化や新材料の採用、3D実装技術の進化など、技術革新への取り組みが不可欠だ。同時に、地政学リスクへの対応や持続可能性への配慮も重要な課題となっている。
2025年に7000億ドルを突破する見通しの半導体市場。AIと自動運転技術の進化が市場をけん引する中、この成長市場を巡る競争は今後さらに激化していくことが予想される。技術革新のスピードが加速する半導体産業において、各社の戦略と投資の行方が注目される。