日本の半導体材料市場は、世界有数の競争力と供給力を誇り、特に露光材料(フォトレジスト)と高純度ガス分野で急速な拡大を見せている。2025年から2033年までの市場成長率は年平均9.5%と非常に高く、2033年には約1,691億米ドル規模に達すると予測されている。
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フォトレジスト拡大の背景と動向
近年、世界的な半導体デバイスの微細化競争は激化しており、TSMCやサムスンら海外大手メーカーの先端ロジック・メモリ生産拡大に伴い、露光工程を支える高機能材料の需要が急増している。その中核がフォトレジスト(感光性樹脂)であり、特にEUV(極端紫外線)リソグラフィー対応品の生産拡大は最重要課題となっている。
日本では信越化学工業やJSR、東京応化工業などがグローバル市場で圧倒的なシェアを持つ。2023年10月には信越化学工業が、最先端半導体製造向けEUVフォトレジストの生産拡大を正式発表した。これは、世界の半導体メーカーからの安定供給要請への即時対応かつ、将来への投資と位置付けられる。
フォトレジストの今後の鍵
– EUV対応材料の量産・技術革新
– 材料の国産化およびサプライチェーン強靭化
– 台湾・韓国・中国など国内外メーカーとの連携・競争激化
– 歴史的に安定した品質・供給体制の維持と差別化技術の開発
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高純度ガスの重要性と供給強化
先端半導体プロセスには100種類を超える高純度ガスが不可欠であり、微粒子や金属不純物の極小化が強く求められる。アルゴン、窒素、フッ素系、アンモニア、さらには希少ガス類など、その大部分で日本メーカーは高純度品供給のグローバルリーダーを維持している。
いかなる供給障害も、世界中の半導体ラインを止めかねないため、地政学リスクや原料高騰、物流混乱を睨み、2022年以降は国内外で増産投資が続いている。メーカー各社は日本国内拠点の再強化や、アジア太平洋圏の現地生産ネットワーク拡大も進めている。
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市場の成長ドライバーとアジア太平洋地域の競争
– 5G通信、IoT、AIサーバーなど新分野の半導体需要
– デバイスの微細化と高層化技術の進展
– グローバルな半導体投資の急増(特に中国、台湾、韓国)
予測では、特にアジア太平洋地域全体が最大の成長を遂げるとされる。ハイテクファウンドリーの集積拡大や、各国政府によるサプライチェーン強化策の後押しが背景だが、その中でも日本は高純度・高付加価値材料の開発・供給で中核的な役割を担い続ける。韓国や台湾、中国本土の巨大消費地を中心に、戦略的パートナーシップや技術移転への動きも活発化している。
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技術革新と課題
フォトレジストに代表される露光材料や高純度ガスは、研究開発サイクルの短縮と、従来の品質・生産能力の一層の引き上げが熾烈な課題。競合の激化、海外依存からの脱却、供給安定を確保するための投資・政策対応が業界の持続成長を左右する。
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今後の展望
日本の半導体材料業界は、引き続きグローバルサプライチェーンの要としての地位を保ちつつ、フォトレジストや高純度ガスといった独自性の高い分野を強力に伸ばしていく見通し。今後は量的な生産拡大だけでなく、品質面・環境対応・新用途開発でも業界を牽引することが求められている。自動車、AI、通信、エネルギーなど産業横断的な半導体需要の高まりを背景に、アジア勢との競争と協調を織り交ぜながら、日本発の材料技術が世界の半導体進化を支え続ける。