最新パーツを駆使したBTO各社の新戦略として、特に注目されているのが「AI PC対応構成の急拡大」である。2025年に入り、Microsoftが「すべてのWindows 11 PCをAI PCに」という新たな戦略を発表したことを契機に、BTO事業者各社は用途最適化をより高度かつ柔軟に提供できる商品提案へと舵を切っている。
従来のBTO(Build to Order)パソコンは、主にゲーミング、ビジネス、クリエイティブ用途などの目的別に最適なパーツを組み合わせて受注生産できる点が強みだった。ここ数年はグラフィックス性能やストレージ速度の重要性が高まり、多くのメーカーが最新GPUや高速PCIe Gen5ストレージを迅速に組み込むためのパーツ調達やカスタマイズ体制を強化してきた。しかし、2024年末から2025年にかけて一気に加速したのが「AI処理専用ハードウェア」搭載のニーズだ。
AI PCは、OSレベルでAIアシスタントや自動化ツールを標準装備とするため、従来のCPU+GPU構成に加えて、AI処理専用コア(NPU: Neural Processing Unit)や大容量メモリ、多層のストレージ構成が求められる。これに応じてBTO各社は、用途ごとに最適なパーツ選択肢を一新している。たとえば以下のような新戦略が見られる。
– AIタスク向け推奨構成モデルの新設
「Copilot」などAIアシスタントのリアルタイム動作や画像・音声認識のローカル処理を円滑にするため、最新NPU搭載CPU(Intel Arrow Lake/AMD Strix Point/Apple M5など)を中心に、高速DDR5メモリ(32GB~64GB標準)、さらに大容量・高速なGen5 SSD構成を標準化したモデルを追加。
– カスタマイズオプションのAI最適化
用途ヒアリングやシミュレーションサービスを強化し、「動画編集でAIアップスケーリングを多用する」「大規模なAI画像解析を行う」などニーズに応じ、GPUのグレードやNPUの有無を細やかに選択可能とした。たとえばNPU搭載モデルのみならず、現場でAI処理を行うためにRTX 4090クラスのGPUを推奨する業種向けセットも増えている。
– 最新OS・ソフトウェアとの適合性保証
Windows 11標準搭載のAI機能に合わせて、「すぐAIが使える」プリインストール環境を構築。デバイス側でプライバシー保持&レイテンシ低減を重視するため、OSやドライバー、ファームウェア一式の事前検証・最適チューンを施した。
– 納期・品質管理体制の高度化
最新パーツの流通量不安や価格上昇リスクが高まるなか、BTO各社は柔軟な在庫管理システムを導入。需要予測AIや生産工程の自動化により、小ロット多品種でも短納期・高安定供給を実現している。日本国内生産にこだわる事業者も多く、製造と検査の品質徹底でAI PC時代の信頼性を訴求する。
また、用途適合度の高さに加え、 将来の拡張性 も新たな選択基準となりつつある。NPUや高速メモリ、PCIe Gen5対応マザーボードの採用によって、3~5年後のソフトウェア進化や追加AI機能にも対応しやすい仕様が求められ始めている。BTOならではの「今必要な性能×将来の柔軟性」を両立したパーツ選びをナビゲートするサービスが特徴的だ。
このように、最新パーツへの迅速な対応と用途最適化を両輪に据えつつ、「AI活用のための基盤強化」「納期・安定供給を徹底」「拡張性保証」といった多層的な新戦略が、2025年のBTO業界全体に浸透している。ユーザーとしては、自身の用途や将来像を考慮しつつ、AI活用時代に最適な構成を柔軟に選べる新時代のBTO提案を積極的に活用するのが賢い選択と言えるだろう。