ホームゲーミングPC/ゲーム機/半導体富士通と日本IBM、AI・クラウド分野で協業を検討中

富士通と日本IBM、AI・クラウド分野で協業を検討中

2025年9月、富士通と日本IBMが戦略的な協業を検討していることが明らかになった。両社はこれまで、システムインテグレーションやITサービス、メインフレーム分野などでしのぎを削るライバル関係にあったが、生成AIやハイブリッドクラウドといった急速に進化する領域において提携の道を模索し始めている。この動きは国内外のIT業界、特に企業のデジタル戦略を担う層に大きなインパクトを与えている。

今回の協業検討は、「AI」「ハイブリッドクラウド」「ヘルスケア」の三つの分野を柱としている。両社は2025年内の正式合意を目指し、具体的なスキームや共同プロジェクトの詰めを急ぐ姿勢を見せている。背景にあるのは、生成AIやクラウド技術の著しい進化、そして国内外の企業におけるデジタルシフトの加速だ。いまや企業活動の基盤が「柔軟性」「拡張性」「安全性」といった要素に大きく依存し、従来の垂直統合型ITだけでは顧客の要求に応えきれない状況がみえてきた。

とりわけ注目されるのは、生成AIとハイブリッドクラウド領域での協業だ。富士通は自社のAI研究開発力やスーパーコンピューティング技術、業界固有のソリューション開発に強みを持つ。一方、日本IBMはWatsonなどに代表されるAI基盤、「IBM Cloud」やハイブリッドクラウド構築ソリューションで先行しており、エンタープライズ向けクラウドの信頼性や拡張性の高さが評価されている。

両社の協業が実現すれば、
– 富士通のAIエンジンや業種別ノウハウと、IBMのグローバル規模のAIプラットフォームやハイブリッドクラウド戦略が相互補完的に機能
– 金融、医療、流通など高度な規制や信頼性・セキュリティが求められる分野で、日本市場に最適化したAI・クラウドサービスが新たに提供可能
– 日本独自のガバナンス要件や企業文化に即したDX支援体制を共同で強化

などが期待される。たとえば、オンプレミスからクラウドへのスムーズな移行や、既存システムを生かしたままAI活用を拡大したいという国内企業のニーズを両社が共同で解決するソリューション作りが進む可能性が高い。

協業検討の背景には、デジタル産業の急成長だけでなく、生成AIの社会実装段階が本格化している現場の声もある。日本国内でもChatGPTを利用した業務効率化の事例が急増し、それを支えるクラウド基盤の強化や高いセキュリティ基準が求められている。こうした流れの中で、グローバルITベンダーのソリューションを「日本市場にあわせてローカライズ」し、特有のビジネス慣行や法規制にフィットさせることが必須となっている。

協業の準備段階として、2025年9月には日本IBMの年次イベント「Think Japan」に富士通の時田隆仁社長が来賓として登壇。AIとクラウド活用に関する両社の方向性や課題認識、さらには業界課題の共有など、表立って前向きな意見交換がなされた。これが情報公開の起点となった。

ヘルスケア分野でも、電子カルテや医療データ分析、創薬支援など、AIの社会的活用が急伸する中でのソリューション共同開発が検討されている。高齢社会の進展にあわせて、医療現場のデータ利活用、「効率化」と「安心」を両立させるシステム整備が日本の医療業界の大きな課題となっているためだ。

業界関係者からは、「過去の競争構造を超えた、日本発・世界最高水準のDX推進体制となり得る」「日本の大手SIerとグローバルITの知見が融合すれば、国内企業の迫るデジタル変革ニーズへの実質的な解答になる」など、期待の声も上がる。一方で、両社が異なる企業文化やエンジニアリング手法をどう融合するかという「現場レベルの実務課題」も指摘されている。

現時点では正式合意に至っていないものの、年内合意に向けて両社は共同プロジェクトの検討を急いでいるという。急激な市場変化と競争環境の中、日本IBMと富士通がどのような新たなAI・クラウドサービス像を提示し、国内IT市場のイノベーションをリードできるかが今後の焦点である。

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